不動産の相続について、ご相談を受けることが増えています。
不動産は、一般に価値が大きく、維持するのにコストがかかる一方で、収益を生むこともあります。また、利用形態は様々で、処分・換価には時間も手間もかかります。加えて、被相続人と一緒に暮らしていた時の思い出など感情的な面も絡み合うといえますので、不動産の相続には、争いがつきものです。
そこで、以下では、遺産に不動産がある場合に、問題となる点について、Q&A方式でご説明致します。
相続、遺産分割の相談内容は、以下に説明するものに限らず、多岐にわたります。
相続、遺産分割でお困りの方におかれましては、ぜひ、当事務所の弁護士にご相談ください。
相続や遺産分割の手続き、話し合いを進めるには、まずは、被相続人の財産を正確に把握することが必要不可欠です。
財産が不明であると、何を、どのように分ければよいのか分からず、手続きや話し合いを進めることができません。また、遺産分割では、分割対象の財産に漏れがあると、遺産分割の話し合いをやり直さなければならないということにもなりかねません。
こういった事態に陥らないために、相続財産の調査は欠かせません。
不動産の調査は、固定資産税納税通知書や権利証などを手がかりに、法務局で登記簿謄本(全部事項証明書)を取得することから始めます。
この他に、市町村役場に対し、名寄帳(固定資産課税台帳)を請求し、その市町村内にある不動産を把握するという方法も考えられます。「たしか、○○市や○○町に土地があったと思うけど、はっきりとは分からない」といった場合には、この方法が有用です。なお、この方法で存在を確認した不動産についても、法務局で登記簿謄本を取得し、現在の権利関係を確認することが重要です。
遺産管理費用と呼ばれる各種費用を遺産分割において取り上げるかについては、確立した考え方がありません。実際の運用としては、相続人間で、遺産管理費用を遺産分割の中で清算するとの合意があれば、そのとおりに取り扱われ、特に問題にはなりません(この場合も、費用の明細等の裏付け資料は必須であると考えられます。)。
しかし、遺産管理費用の支出額や分担の割合・方法について相続人間で争いがあり、清算の合意ができない場合には、遺産分割の中で調整することはできず、別途、民事訴訟(不当利得返還等の請求)の手続きで解決が図られるしかありません。遺産管理費用は、あくまで、相続開始後に生じた債務負担の問題にすぎず、これは共同相続人が各自の相続分にしたがって承継し、負担するとされていることが、その理由です。
相続開始後に遺産から生じた収益(遺産収益と呼ばれます。)については、相続財産そのものとは別個の財産であることを前提としつつ、相続人間で、これを遺産分割の中で清算するとの合意があれば、遺産分割の対象に含めることができます。紛争の一体的解決の観点などから、遺産収益も、遺産分割の中で清算されることが望ましいと考えられ、実際の運用としても、このように取り扱われています。
しかし、これも、遺産収益の分配額・分配方法について相続人間で争いがあり、清算の合意ができない場合には、遺産分割の中で調整することはできず、別途、民事訴訟(不当利得返還等の請求)の手続きで解決を図るしかありません。なお、判例では、相続人が新たに開設した口座に遺産収益が振り込まれた事案において、遺産収益を、共同相続人が各自の相続分にしたがって分割単独債権として取得するとされています。
遺産に不動産が含まれる場合、その不動産の価値を確定させることが必要になります。
共同相続人が子2人(A・B)で、法定相続分通りに各2分の1の割合で遺産分割するケースを考えます。
例えば、遺産が不動産1つだけである場合、不動産を売却するなどして換価し、売却金をA・Bで分割するのであれば、それほど難しい話にはなりません。しかし、Aが単独で不動産を取得する場合はというと、Aは、Bに対し、不動産の価値の2分の1に相当する代償金を支払わなければならず、このときに、不動産の価値をいくらと見るか争いになることが考えられます(Aは、価値が低くあって欲しいと考えるでしょうし、Bは、価値が高くあって欲しいと考えることでしょう。)。
不動産の評価を確定させる方法の第一は、相続人間での合意です。合意できれば、時間もコストもかかりませんし、何より、相続人の感情面も気にする必要がなくなります。しかし、この合意形成がスムーズにいくかというと、なかなか難しいことが多いです。
少なくとも、合意するには、客観性の高い公正な資料が求められます。土地であれば、固定資産評価額、路線価など、建物であれば固定資産評価額などです(この他、土地については、地価公示価格や地価調査標準価格という基準もあり、国土交通省ウェブサイトの「土地総合情報システム」で検索することができます(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)。)。
固定資産税等の基準とされる価格であり、土地の個別的要因(地形など)を考慮して固定資産評価基準により不動産ごとに決められています(公示価格の70%を目途に設定されています。)。特に、土地価格と比べて安いことが多い建物価格について、価格合意のための資料としてよく利用されています。
固定資産評価額は、市町村で名寄帳(固定資産課税台帳)や固定資産評価証明書を取得して確認することができます。
相続税等の基準とされる価格であり、財産評価基本通達により対象土地の地目ごとに算定されています(公示価格の80%を目途に設定されています。)。財産評価基本通達は、相続税等を課すための財産評価の方法として全国共通の画一的かつ合理的な基準であり、また、路線価は毎年評価替えされ地価変動を詳細に反映しているといえることから、相続人間で納得を得やすい基準としてよく利用されています。
路線価は、国税庁のホームページ上で公開されており、誰でも確認することができます。
以上が不動産の価値の合意形成のためによく利用される客観的な基準ですが、これ以外にも、相続人が各自で、不動産業者に作成を依頼する「査定書」、不動産鑑定士に依頼して作成してもらう「鑑定書」なども有用であり、参考にされることがあります。
また、家庭裁判所において、不動産鑑定士等の資格を有する家事調停委員(専門委員)から意見を聴取したり、不動産鑑定士を鑑定人に選任して評価を行うこともあります。
問題の土地は、使用借権(賃料を支払わず無償で使用等ができる権利)が設定された土地として評価されます。この使用借権の設定は、原則として、特別受益に当たると考えられます。そうすると、土地使用借権の生前贈与があったとして、土地使用借権相当額(更地価格の1割から3割程度の価値になることが多いです。)について、計算上相続財産に持ち戻して(加算して)相続分を算定することになりますが、この場合、別途、被相続人による持戻し免除の意思表示があったか否かが検討されることになります。
なお、実際の運用では、使用借権が設定された土地は、その使用借権分が土地の価値から減価されますので、その上で、使用借権相当額が特別受益として持ち戻される結果として、結局は、土地が更地評価されることになることも多いです。
扶養の負担と土地使用の利益とは実質的に対価関係に立つと考えられ、⑴のケースと比べて、特別受益に該当し難いと考えられます。仮に、特別受益に当たるとしても、黙示の持戻し免除があったものと考えられます。
賃料相当額の特別受益があるのではないか、問題となります。建物の使用貸借は、土地の使用貸借(⑴のケース)と比べ、それ自体経済的価値は無いに等しく、また、恩恵的、情誼的なものであることから、遺産の前渡しと見るのは難しいと考えられます。
もっとも、建物がいわゆる収益物件であり、本来第三者に賃貸しているはずのものであるにもかかわらず相続人に無償で使用させたということであれば、特別受益に当たりうるとも考えられます(この場合、別途、被相続人による持戻し免除の意思表示があったか否かが検討されることになります。)。
相続人に、⑶のケースと比べて、独立の使用貸借の権限があるとはいえず、いっそう特別受益とは見ることができなくなると考えられます。
共同相続人全員との間で、遺産分割を行う必要があります。そのためには、遺産分割の前提として、相続人の調査をしなければなりません。
相続人の調査をしなければ、遺産分割の協議を誰としたらよいか分かりませんし、仮に遺産分割が成立した後に、他に相続人がいることが判明すると、遺産分割が無効になってしまいますので、相続人の調査は不可欠です。
相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得するなどして、行います。これにより、相続人を漏れなく調査することができます。しかし、被相続人が、祖父母の代や、それより上の世代である場合には、この相続人調査だけでも一苦労ではあります(相続人調査は、弁護士に依頼することができます。)。
なんとか相続人の調査を終えたら、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書を作成するにあたり、相続人の人数が多いと困ることがあります。遺産分割協議書は、共同相続人全員が署名し、実印で押印して作成するものです。相続人全員が持ち回りで作成するとなると、時間がかかりますし、紛失等のおそれもあります。そこで、遺産分割協議書作成に替わるものとして、家庭裁判所において遺産分割調停を成立させる(そして可能であれば、一部の相続人に相続分の譲渡・放棄をしてもらう)という方法が考えられます。相続分の譲渡・放棄をした人は、相続人としての地位を失い、家庭裁判所は、手続きからの排除決定を行います。これにより、相続人の立場にある人を減らすことができます。また、調停調書には相続人の押印は不要ですので、遺産分割協議書に相続人全員の実印での押印をもらわなければならないという事態も回避することができます。
次に、遺産分割が成立した後の手続きとの関係でも、留意すべき点があります。裁判所外で遺産分割協議を成立させるか、家庭裁判所で遺産分割調停を成立させるか、いずれの場合でも、遺産分割の話がまとまれば、法務局で相続登記を行い、名義人となった者が、不動産を売却するなどして処分することになります。この場合、相続人のうちの誰かが単独で不動産を取得するなど、不動産の新たな名義人の人数は少なくしておくほうが効率的です。と言いますのも、相続した不動産を売却する際には、名義人全員で売買契約書を作成する必要があるのですが、新たな名義人の人数が多いと、方針が食い違ってくるなどして、不動産の売却がスムーズに進まなくなる可能性が高まるからです。
なお、遺産分割の結果として、相続人のうちの一人が単独で不動産を取得することは効率的ではありますが、その相続人は、これと引換えに、他の相続人に対し代償金を支払わなければなりません。「古い家だし、もう任せるよ。お金も要らないよ。」などと言ってくれる共同相続人ばかりであれば問題にならないのですが、相続人の中には、どれだけ古く価値が低い家であっても、自分の相続分に相当する代償金はきちんと支払ってもらいたいと考える人もいます。この場合は、遺産分割をまとめるにあたり、不動産の価値を算定し、これを法定相続分で割るなどした金額を支払うことが必要になります。もっとも、売却する前に代償金を支払うことが難しければ、不動産を何人かの相続人で共同で取得し、共同で売却して、売却金を相続分に応じて分けるという方法も考えられるところです(相続人のうちの一人が不動産を取得した後に売却して売却金を分けるという方法も考えられますが、他の相続人の理解を得られることが前提となります。)。
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