3人兄弟のうち、長男だけが父親の家業を手伝い、長男の努力で、その事業を大きく発展させ、その結果、父親の財産も、大きく増加したような場合、父親からの相続で、長男の相続分が、二男・三男と同じでは、不公平となります。
このような場合、被相続人のために多大な貢献をした相続人(この場合では、長男)には、遺産分割による相続分に加えて、貢献に応じた取り分も受け取ることができます。その加算が、寄与分とされるものです。
どのような場合に、寄与分が認められるのでしょうか。
民法上、寄与分が認められる主なケースとして、以下の3点があげられています。
これは、親の家業を手伝い、親の財産形成に貢献した場合があたります。
これは、親の家業に資金を提供し、このために、経営破綻を回避できたり、あるいは、それを元手に事業拡大を成功させたような場合です。
これは、病気の親を自宅で看護し、このために、親が、本来、支払うべきであった看護費用の支払を免れたような場合です。
ここで、注意を要するのが、寄与分が認められるには、扶養義務を超えた著しい程度の貢献が必要であり、通常の家事や看病に対しては、寄与分が認められないことです。
寄与が認められた場合、寄与分の算定方法は、次のとおりです。
算定方法を、具体的な例に沿って、説明すると、以下のとおりです。
3人兄弟のうち、長男だけが父親の事業を手伝い、その貢献の結果、父親の財産が9000万円から1億2000万円と増えた場合、3000万円が寄与分となります。母親は既に亡くなっていた場合、3兄弟の相続額は、以下の額となります。
寄与分を求める相続人がいる場合、他のすべての相続人から、その人の寄与分を認める合意があれば、寄与分を反映させた割合での遺産分割協議を成立させることは可能です。
協議で寄与分を定めることができない場合には、家庭裁判所に寄与分を定めるための調停を申し立てることができます。
申立てをする家庭裁判所は、相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者の合意で定めた家庭裁判所です。
実際には、寄与分に関する調停だけを申し立てられることは少なく、全体の遺産分割についての調停として申し立てられる場合がほとんどです。
希に、寄与分のみに関する調停が申し立てられた場合でも、遺産分割の調停も、同時に係属していれば、調停手続は併合されて、一括で処理されることとなります。
寄与分を定めるための調停ではなく、審判を申し立てることができる場合は、極めて限定されています。
遺産分割審判の申立てがあった場合と死後認知を受けた相続人の価額支払請求があった場合に限られます。
さらに、遺産分割審判の申立があった場合、家庭裁判所は、寄与分を定める審判の申立時期をすべき期間を定めることができ、定められた期間を経過した後は、適法に寄与分を定める審判の申立てはできないこととされています。
遺産や相続について、弁護士に相談、依頼することは、今では、ごくありふれたことです。
寄与分に関する相続争いでは、感情面の不満や納得できないという気持ちが絡み、なかなか話が進まないという事態も起こりえます。弁護士は、依頼者の思いを聞き、思いに寄り添いつつ、しかし冷静に、遺産分割の交渉を進めます。
寄与分に関して相続でもめている方は、ぜひ一度、弁護士までご相談いただけたらと思います。
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