遺産管理のために立て替えた費用は清算してもらえるでしょうか?
- 2021年03月22日
- よくあるご質問
遺産の保存、利用等にかかる費用を相続人のうち一部の者が負担した場合、これを清算することはできるのでしょうか。例えば、遺産として不動産がある時、この不動産の固定資産税の負担について問題になります。
遺産管理費用は、被相続人が生きていれば被相続人が負担するべきものですので、遺産から清算されるべきであるという考え方は不合理でないように思います。他方で、遺産管理費用は相続開始後に生じた債務であることから、遺産から清算されるべきでないという考え方もあります。相続人同士で、遺産管理費用を遺産から支出すること、すなわち、立替費用を遺産で清算することに合意することができれば問題はありません。しかし、共同相続人の中に、これに反対する者がいる場合には、話合いの中で、立替費用を遺産で清算することは事実上困難であると思われます。
では、この場合、遺産管理費用を立て替えた相続人は、他の共同相続人に対し、何も請求できないのでしょうか。法的には、立替えを行った相続人は、他の共同相続人に対し、立替費用のうち法定相続分に相当する金銭の支払いを求める民事訴訟を起こすことが考えられます。しかし、一般に、立替費用の金額はそれほど大きいものではなく、訴訟を起こしてまで支払いを請求するのは、時間、労力、お金の観点から決して容易なことではありません。
したがって、遺産管理のための費用を立て替えなければならないときには、まずは、共同相続人の間で、遺産からの支出について合意を取り付けておくことが重要です。もちろん、事前に合意を取っておいても、後から問題になる可能性をゼロにすることはできません。しかし、遺産管理費用の額と、その原資を明確にしたうえで、遺産からの支出について事前に説明をしておくことは、事後報告と比べて、他の共同相続人の反発を招きにくい方法であると考えられます。