遺産分割の方法として、協議、調停、審判というものがあります。
被相続人が亡くなられたとき、共同相続人はいつでも、その協議で、遺産の分割をすることができます(民法907条1項)。しかし、協議が整わない場合やそもそも協議をすることができない場合には、家庭裁判所における手続きとして、調停や審判を利用することが考えられます(民法907条2項)。
以下では、協議、調停、審判の進め方と各段階における留意点をご説明しようと思います。
協議とは話合いを指します。話合いの場所は問いませんし、話合いの方法は直接会って話すのでも、電話やメールなどの通信手段を用いて行うのでも構いません。ただ、相続人同士が久しぶりに会うということもありうること、各相続人には様々な思惑がありうることから、話の切り出し方には注意が必要です。
協議を進めるにあたっては、相続人が誰か、遺産が何でどれくらいあるかを明らかにする必要があります。そして、各相続人が遺産のうち何をどれだけ取得するかを話し合い、その取得方法も決めたうえで、まとまった協議結果を遺産分割協議書に反映させて終了になります。
協議のメリットは、法律にとらわれない自由な遺産分割が可能なところにあります。共同相続人の意思が合致すれば、分割の方法に特に制限はありません。したがって、遺産分割が早く終わる可能性も十分にあるといえます。他方で、相続人のうち一人でも「うん」と言わない方がいる、又は、一人でも連絡が付かない場合には、この協議の方法で遺産分割を終了させることはできません。これが、遺産分割協議の限界です。
協議によって解決できない場合、家庭裁判所に対し遺産分割調停を申し立てることを考えます。裁判所と聞くと尻込みされる方もおられるかもしれませんが、調停はいわゆる「裁判」ではなく、裁判所で行う話合いを意味します。調停では、多くの場合、調停委員という裁判所の非常勤職員で豊富な知識経験を有する市民の方が、各相続人の言い分を交互に聞いて間を取り持ち、適切な解決を目指して導いてくれます(家事事件手続法247条)。
調停においても、協議の段階と同様、相続人が誰であるかの確認から各相続人の遺産の取得方法の決定まで話合いが進められます。話合いがまとまれば、裁判所において調停調書が作成され、これを相続人全員で再確認して終了します。
調停のメリットは、法律に則った話合いをすることができることです。また、遺産分割事件を数多く手掛けてきた第三者の関与も得られるため、合理的な合意を目指すことができるのも長所の一つです。協議では各相続人の自由な言い分が披露されるばかりでまとまらなかったものが、調停となると、第三者の関与もあって硬直状態から脱することも少なくありません。他方で、調停は原則として早くても一か月に一度のペースで進むため早期の解決が難しいこともあります。また、調停もあくまで話合いであるため合意に達しなければ不成立となり解決に至らないという事態がどうしても生じてしまいます(家事事件手続法272条1項)。
協議でも調停でも、いわゆる話合いで遺産分割が解決できない場合の最後の方法として審判があります。審判は、調停が不成立になった場合に開始されることが多いですが(家事事件手続法272条4項)、共同相続人と全く話合いができない場合など、調停を経ずにいきなり遺産分割審判を申し立てるということも考えられます(なお、裁判所の運用上、まずは調停に付されることが通常ではあります(家事事件手続法274条1項)。)。審判は、家庭裁判所が様々な調査を経たうえで行う強制的な判断であり、いわゆる「裁判における判決」と同様の効果があります。
審判のメリットは、法律に基づき裁判所が強制的に遺産分割を終了させるという点にあり、話合いがまとまらない場合やそもそも話合いをすることができない場合には有用な方法といえます。他方で、裁判所が判断するといっても、そのための資料の収集が必要ですので、審判が出されるまでには相当の期間を要します。また、話合いを前提にしておらず、法律に則って判断されますので、各相続人の言い分がどこまで聞き入れられるか不透明なところもあります。
遺産分割の方法についてご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
それぞれの方法がどのようなものかという大枠は掴んでいただけましたでしょうか。
いずれの段階においても、遺産分割において生じる紛争(すれ違いと言ってもよいかもしれません。)の実態や法律で定められた事項をよく知る弁護士が関わらせていただくことは可能であり、かつ、効果的であるといえます。遺産分割事件の多くは話合いで終了しますが、後に控える手続きの流れを理解した専門家に依頼することは、その想定も踏まえた柔軟な解決を目指すことができ、結果的により良い、より迅速な解決に資するものです。
遺産分割は誰でも直面しうるものです。お困りの方、又は、お困りの方をご存知の方におかれましては、ぜひ一度ご相談にお越しいただきたいと思います。
まずは、お電話で法律相談のご予約をお取り下さい。
相談に関するご希望等(相談時間、担当弁護士等)がございましたら、ご予約の際にお伝え下さい。
なお、弁護士が相手方から既に相談を受けている場合や、その他相談に応じることに支障がある場合には、相談をお断りする場合があります。
予約された日時に、当事務所へお越し下さい(電話やメールによる相談は行っておりません)。
弁護士が相談に応じます。
弁護士には守秘義務がありますので、秘密は固く守ります。
相談の結果、弁護士に依頼されるかどうかは、相談者の皆様の自由です。当事務所から、相談者の皆様の意に沿わない勧誘を行うことはありません。
相談の結果、弁護士に依頼されることを希望される場合には、その旨ご連絡下さい。受任させていただく場合には、ご要望に応じ、見積書を作成いたします。その後、内容をご検討の上、ご依頼されるかどうかお決め下さい。
〒631-0824 奈良市西大寺南町8番33号 奈良商工会議所会館1階
TEL 0742-81-3323
FAX 0742-81-3324
近鉄「大和西大寺駅」南側より徒歩3分。
近鉄「大和西大寺駅」の中央改札口を出て、右方向(南側)に進み、地上まで降ります。
バスロータリーから南に向かって直進し、一つ目の信号を越えた左手に「奈良商工会議所会館」のビルがあります。
その1階に弁護士法人ナラハ奈良法律事務所があります。
近鉄「大和西大寺駅」南側より徒歩3分。
近鉄「大和西大寺駅」の中央改札口を出て、右方向(南側)に進み、地上まで降ります。
バスロータリーから南に向かって直進し、一つ目の信号を越えた左手に「奈良商工会議所会館」のビルがあります。
その1階に弁護士法人ナラハ奈良法律事務所があります。